イラレ生成AIターンテーブルで3D化!成功させる秘訣とは?

イラレ生成AIターンテーブルで疑似3D化ができる。その成功法則について illustrator

イラレの新しい生成AIで「たった1枚のイラストが、まるで3Dモデルのように自在に回転する」

そんな夢のような機能が、ついにAdobe Illustrator(イラレ)に登場しました。その名も「ターンテーブル」。この生成AIを活用した新機能は、2Dのイラストに新たな命を吹き込み、様々な角度からのバリエーションを自動で生成してくれます。

申し遅れました。私は専門学校講師のイラレさんと申します。イラレに関する自身の書籍なども出版しています。詳しくは下のページをご覧ください。

専門学校講師イラレさんのプロフィール

そんな私が今回は、この革新的な「ターンテーブル」機能について、何が成功し、何が失敗するのか、テイストの異なる5つの素材で徹底検証。その結果から見えてきたAIの思考パターンと、成功に導くための法則を、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

この記事を読めば、あなたも「ターンテーブル」を使いこなし、創作の幅を大きく広げることができるでしょう。

イラレの新機能「ターンテーブル」とは?

まず、「ターンテーブル」機能の基本についておさらいしましょう。

イラレ生成AI「ターンテーブル」で生成された三毛猫のイラスト。様々な角度から見たバリエーションが表示されている。

この機能は、1枚のイラスト(ベクターデータ)を用意するだけで、AIがその形状や奥行きを解釈し、まるで3Dオブジェクトのように様々な角度から見たイラストを自動で生成してくれるというものです。

【重要】 2025年9月現在、この「ターンテーブル」はIllustratorのベータ版のみに搭載されている機能です。正式版にはまだ実装されていませんので、利用するにはAdobe Creative Cloudからベータ版アプリをインストールする必要があります。インストールから知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

Illustratorのターンテーブルで2Dイラストを3D風に変換
Illustrator ターンテーブル機能の使い方を徹底解説。1枚の2Dイラストから様々な角度のバリエーションを自動生成する革新的なAI機能の詳細な操作方法、注意点、活用例まで初心者向けに詳しく紹介します。

ターンテーブルの基本的な使い方

イラレの生成AIの一つであるターンテーブルの使い方はとてもシンプルです。

イラレ生成AI「ターンテーブル」機能を選択する様子。オブジェクトメニューから簡単にアクセスできる。
  1. 角度を変えたいイラストのオブジェクトをすべて選択します。複数のパーツで構成されている場合は、あらかじめグループ化しておきます。
  2. メニューバーの オブジェクト > ターンテーブル を選択します。
  3. しばらく待つと、プレビューウィンドウが表示され、マウス操作でぐりぐりとイラストを回転させ、好きな角度のイラストを生成できるようになります。

では早速、この機能がどれほどのポテンシャルを秘めているのか、具体的な検証結果を見ていきましょう。

イラレの生成AI「ターンテーブル」5つの素材で徹底検証

今回は、キャラクターイラストからシンプルなロゴまで、特徴の異なる5つの素材を用意し、それぞれターンテーブルでどのような結果になるかを試してみました。

イラストレーターのキャラクターイラスト

ラレ生成AI「ターンテーブル」で回転前のピカチュウ。帽子に向かってジャンプしているイラストを素材として使用。

最初に試すのは、皆さんが最も気になるであろうキャラクターイラストです。今回は、サトシの卒業を記念して描かれた、ジャンプ中のピカチュウのイラストを使用しみます。浮いている感じや、帽子の形状、距離感が維持できるか?つまりは空間把握がどれだけできているか?が注目のポイントです。

操作手順: イラスト全体を選択してグループ化し、オブジェクト > ターンテーブル を実行します。

イラレ生成AI「ターンテーブル」を使い、ピカチュウがジャンプするアニメーションの各角度を生成している様子。

結果: 驚くべきことに、空中に浮いている空間を見事にAIが認識し、立体感を保ったまま回転させることに成功しました。

イラレ生成AI「ターンテーブル」で、ジャンプ中のピカチュウをハイアングルに設定
  • 正面〜側面: 若干の線の乱れはあるものの、少し手直しすれば十分に使えるクオリティです。ピカチュウ本体の丸みや可愛らしさは維持されています。
  • ローアングル: 下からのアングルでも、空間を正確に把握しているかのように、自然な見え方を再現してくれました。
  • ハイアングル: 上から見下ろした俯瞰の構図も、まるで最初からその角度で描かれたかのようなクオリティで生成されました。

イラストレーターのゆるいタッチのイラスト

次は、線に隙間があったり、装飾(あしらい)が付いていたりする、ゆるいタッチのイラストです。このようなデフォルメされたイラストがどう立体化されるのか、状時期に言うと私自身も想像がついていません。だからこそ、それができるのなら自分の可能性を広げてくれると思います。

結果: こちらも予想外に上手くいきました。

  • 髪の毛や背面: 前からでは見えなかった髪の毛の背面まで、しっかりとAIが補完して生成してくれました。
  • 装飾: イラストの周りにある装飾の線も、立体的な空間に合わせて自然に追従しています。
  • 立体感: 手や体の部分も、ペラペラにならずにきちんと厚みを感じさせる表現になっています。

大きく回転させる方が使っていて面白味があると思いますが、少し角度を変えるくらいの使い方の方が汎用性が高そうな印象です。線のタッチを問わず、人物イラストとの相性は良いと言えるでしょう。

イラストレーターの複雑なベクターイラスト

イラレ生成AI「ターンテーブル」で検証する複雑な色彩の猫イラスト。インクが飛び散る背景も立体的に表現できるか。

続いて、Illustratorの「テキストからベクター生成」機能で作られた、インクが飛び散った背景とカラフルな猫のイラストで試します。今回試した中で最も複雑なイラストです。

イラレ生成AI「ターンテーブル」で複雑な猫イラストを処理する際、表示された警告画面。続行を選択した場合の結果を検証。

操作手順: オブジェクト > ターンテーブル を選択すると、「単純すぎる、複雑すぎる、または複数の要素が含まれている可能性があり、ターンテーブル操作には適していません。続行しますか?」という警告メッセージが表示されました。今回は構わず「続行」を選択します。

イラレ生成AI「ターンテーブル」機能を使い、水彩画風のカラフルな猫のイラストを横顔から正面へと滑らかに回転させる様子

結果: 警告が出たにもかかわらず、驚くほど高い精度で立体化されました!

  • 猫の顔: 顔の凹凸や鼻の形など、非常に立体的に再現されており、頭の形もしっかりと維持されています。
  • 背景のインク: 背景で飛び散っているインクは、猫の周りを漂う立体的なオブジェクトとして解釈されたようです。
  • 別アングル: 下からのアングルでも上からのアングルでも、猫の顔の構造が破綻することなく、見事に表現されていました。

「複雑すぎる」とAIに警告されても、一度試してみる価値は十分にありそうです。

イラストレーターのシンプルなロゴ

ピンク色の台座の上に座るシンプルな猫のイラスト。イラレ生成AI「ターンテーブル」検証用の素材として、どの程度立体化できるか

ここからは、上手くいかなかったパターンです。シンプルなロゴに対してターンテーブルを使うことで学校の銅像のような、重厚感のある立体になることを期待しましたが…

イラレ生成AI「ターンテーブル」で、台の上の猫のイラストを-90度回転させている様子

結果: 残念ながら、これは上手くいきませんでした。

警告メッセージが表示された後、生成されたオブジェクトを回転させてみても、回っているのかもわからなかったり、すべてが一体化されたような画像となり何がどうなっているのか分からない状態になりました。

イラストレーターの文字

イラレ生成AI「ターンテーブル」で文字「山路を登りながら」を回転させようとしている。回転前の様子

ロゴがダメなら、文字はどうでしょうか?「山路を登りながら」という文字で試してみます。

操作手順: まず、テキストオブジェクトのままではターンテーブル機能が使えません。そのため、文字を選択し、書式 > アウトラインを作成 を実行して、文字を図形(パス)に変換してからターンテーブルを適用します。

イラレ生成AI「ターンテーブル」で文字「山路を登りながら」を回転させているが、形が崩れている様子

結果: こちらもロゴと同様、形が崩れてしまいました。

イラストよりも文字は形が崩れてはいけない厳密さがあるため、少しでも崩れると成立していない印象になると思います。ターンテーブル機能には向いていないようです。ちなみに、このような文字を立体化したい場合は、従来からある 効果 > 3Dとマテリアル を使う方が、はるかに綺麗で意図した通りの結果が得られます。

イラレの生成AIがイラストを理解する思考パターンとは?

5つの検証結果から、ターンテーブルという生成AIの得意なこと、苦手なことが見えてきました。なぜこのような差が生まれるのでしょうか。

イラスト バリエーション生成が得意なもの

  • キャラクターや人物、動物など、具体的な形状を持つイラスト
  • 顔のパーツや体の丸みなど、立体を推測できる情報が多いイラスト
  • 複雑な描き込みがあるイラスト(警告が出ても成功する場合がある)

成功例に共通するのは、AIが「奥行き」を推測するための手がかりが多いという点です。 おそらくターンテーブルのAIは、膨大な数の写真やイラストから「光と影の付き方」や「形の奥行き」を学習しています。そのため、顔や体のように立体的な構造がある程度決まっているオブジェクトは、「きっと裏側はこうなっているだろう」とAIが賢く補完し、高精度なバリエーション生成を可能にしていると考えられます。

イラスト バリエーション生成が苦手なもの

  • シンプルなロゴマーク
  • 文字(テキスト)
  • 平面的で、記号的なデザイン

一方、失敗例は平面的で、AIが奥行きを解釈するための手がかりが極端に少ないオブジェクトでした。 ロゴや文字には、キャラクターの顔のような「ここが手前で、ここが奥」という情報がほとんどありません。学習するための素材も少ないのでしょう。そのため、AIが無理に立体として解釈しようとした結果、形が破綻してしまうのではないかと推測されます。

イラレのターンテーブルで成功率を上げる2つのコツ

最後に、検証結果から導き出した、ターンテーブルの成功率を格段に上げるための2つの重要なコツをご紹介します。

1. 生成AIが主役を認識しやすいようにする

AIに「これが動かしたい主役だ」と明確に認識させることが、精度を上げるための鍵です。

例えば、複数のキャラクターやオブジェクトが描かれたイラストを、まとめてターンテーブルにかけると、AIがどれを主役にすべきか混乱し、個々で実行した時よりも精度が落ちてしまいます。描画が省略されたり、形が崩れたりする原因になります。

実践的なコツ: ターンテーブルを適用する際は、動かしたい主役のオブジェクトだけを選択し、背景など関係ないものは含めないようにしましょう。オブジェクトを一つに絞ることで、AIが処理に集中でき、より正確な結果を得やすくなります。

2. 生成AIが奥行きを推測しやすいように適度に描き込む

シンプルなロゴや文字が失敗したことからも分かるように、情報量が少なすぎるとAIはうまく機能しません。逆に、キャラクターイラストのように、ある程度の描き込みがある方が、AIは形を補完しやすくなります。

もしシンプルなイラストで上手くいかない場合は、影を少し足してみたり、線の強弱をつけたりして、立体感のヒントを少し加えてあげるだけで、結果が大きく改善される可能性があります。

まとめ:イラレの生成AI「ターンテーブル」を使いこなそう

今回は、Illustratorのベータ版に搭載された新機能「ターンテーブル」について、その可能性と成功の秘訣を探りました。

検証から分かったこと:

  • 得意なのは「キャラクター」などの具体的で情報量の多いイラスト。
  • 苦手なのは「ロゴ」や「文字」などの平面的で記号的なデザイン。
  • 成功のコツは「主役を明確にし、適度に描き込む」こと。

この機能はまだ発展途上であり、万能ではありません。しかし、その特性を正しく理解して使えば、これまで多くの時間と手間がかかっていた「別アングルのイラスト作成」を劇的に効率化し、あなたの創作活動を力強くサポートしてくれる素晴らしい機能であることは間違いありません。

ぜひ、Illustratorのベータ版をインストールして、この未来の機能を体験してみてください。きっと、新しい表現の扉が開かれるはずです。

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